魔界少女キャシーと殺人人形

Do you know "Creepy Doll Movies"?

〜実録人形ホラー映画の新鋭〜"MANDY: The Hounted Doll"

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 2018年にイギリスで製作された人形ホラー映画“MANDY: The Hounted Doll”(以後は“MANDY”と略す)は、実在する呪いの人形を題材として扱った映画だが、物語自体は『ザ・ボーイ 人形少年の館』と『ドント・ブリーズ』からアイデアを丸パクリして、どういうわけか人形目線の人形ホラー版『ホーム・アローンのようなものに仕上げてしまったというヘンテコな映画だ。

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 どのような物語の映画なのかといえば、三人のバカな盗人が、ターゲットにした老婆の邸宅に留守番として侵入したはいいものの、老婆から言い渡された「マンディの世話をしろ」というルールを無視して金品を盗もうとする。その結果、実はその正体が幽霊憑きの人形だったマンディによるこっぴどいお仕置きを受ける(殺される)…というものだ。

 

 では、この映画の何が人形目線の人形ホラー版『ホーム・アローン』たらしめているのか?…とはいえ、本来、この映画はそんなものにしようとなんて思ってはいなかったはずだ。

 

 先述してはいるが、この映画は実在する呪いの人形を題材にしている

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 それというのは「この世には実在する“いわくつき”の人形があって、その人形にはこれだけの恐ろしいバックボーンやエピソードがあるのだ」ということを観る者に伝えるための何かしらの実録性を持たせなければ意味のない題材である…ということだ。

 そう考えたとき、この映画が人形目線の物語になってしまうのはおかしい。実在するマンディと名付けられたその人形は、呪われていようが何であろうが、ただの人形だ。ただの人形が言葉を発するはずもないので、人形の目線から物語を紡げるはずがない。

 しかし、この映画は誰がどう観たって人形目線の映画なのである。もっと言ってしまえば、本来は観る者の感情移入する先であるべき主人公となる盗人側には同情の余地が一切ない。さらには恐怖の対象であるはずだった人形側を応援したくなってしまうようなドラマの描き方がなされている。

 これはただ単にこの映画全体の物語の紡ぎ方や見せ方が下手糞だから…ということに尽きるのだが、その結果、意図せずに人形目線の人形ホラー版『ホーム・アローン』が誕生してしまった節がある。これはある意味で不幸中の幸いだろう。なんせこんな人形ホラー映画は今までに存在しなかったのだから。

 たしかに主人公は盗人側だが、同じく盗人が主人公として描かれる映画『ドント・ブリーズ』とは違い、主人公側に盗みを働かざるを得ない要因がまったくない。生活に苦労しているわけでもなく、ただ何となく生きているような連中だ。

 一方、呪いの人形マンディとその老婆はたったの二人暮らしで、誰に迷惑をかけることもなくひっそりと暮らしている。老婆は人形に宿っている霊がいじめられっ子の女の子であることも理解しており、彼女の寂しさや悲しさに寄り添うようにして、我が子のように扱っている。

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 マンディはそんなおばあちゃんが大好きだ。だからこそ、おばあちゃんの大事な家を荒らしに来た主人公達を懲らしめてやろうと孤立奮闘する。この映画はそういったマンディの視点で描かれる。

 最終的にはマンディだけでなく老婆も参戦して主人公等に襲い掛かってくるのだが、やはりどう見たって、ただただ大事な愛娘のマンディを守ろうと老体に鞭を打って戦う健気なおばあちゃんにしか見えない。

 もしもこの映画が腕のある監督の手によって本来あるべき描かれ方をしていたならば、きっとこのような映画にはなっていなかったはずだ。

 それこそ本当に『ザ・ボーイ~』と『ドント・ブリーズ』を足して二で割ったような、逆に面白みのない映画に仕上がっていたのかもしれない。そう考えるとこの映画はこれで良いのだとも思える。

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 この映画には人形を使ったホラー映画として良かった点もあることを忘れてはならない。マンディのアクションにCGを一切使っていないところは非常に高く評価したいポイントだ。

 とはいえ、基本的にマンディのアクションとは、ナイフを持ってちょこまかと走り回るくらいのものではあるのだが…。やはり人形ホラー映画はしっかりと人形を使ってこそ!なので。

 

 映画の出来そのものは非常に陳腐であり、隠しようのない素人臭さが全面に出てしまっているので、観るに堪えない部分は多々ある。オススメはしないが、ちょっとした変わり種の人形ホラー映画ということで紹介しておく。